脊椎の病気が診断された場合、最初に保存療法を行います。保存療法は病態に応じて、 最適な方法を組み合わせて提案します。ただし、当院においては他人に頼って治療を行うのではなく、 ご自身の努力によってご自身で治していくことを主眼とします。
- 1) 日常の姿勢を改善すること
- 猫背などの悪い姿勢や偏った姿勢の持続が脊椎の変形をもたらします。逆に、良い姿勢をとるようにすると、 進行が止まるばかりでなく症状が改善することも多いです。そのために、常日頃から良い姿勢をとることを意識することが重要です。
- 2) 運動すること
- 症状が急激に発生した場合には、背骨やその周りの筋肉や靭帯が傷んでいますので、安静にすることが大事です。
しかしながら、症状が長期間持続する場合には、逆に運動が良い効果をもたらします。
適度な運動をすることで背骨を支える筋肉が強化され、背骨が安定化します。 また、運動により全身の血流が改善することにより、脊髄や神経が圧迫されている部位でも血流が改善し、 症状の緩和が期待できます。短時間でも良いですから定期的な運動が望ましいと考えられます。
また、筋肉や靭帯を傷めるほどの運動は脊椎の損傷を誘発し逆効果と考えられます。 一般的に推奨される運動は、腕立て伏せ(困難であれば立位で壁に向かっての腕立て伏せ)、腹筋運動、 スクワット、鉄棒などからのぶら下がりなどです。
- 3) 温めること
- 温泉につかると腰痛が改善することはよくあることです。
これは、血流が改善するとともに、 脊髄や神経が温められて緩むためとも考えられます。従って、温泉療法には理があります。日常的には、 腰や首にホッカイロを貼ること、冷房を避けること、温かい飲み物や食べ物を摂取することなどが推奨されます。
- 4) 食事に気をつける
- 認知症を防止するために、脳に良い効果が期待されるブレインフードが推奨されています。
オメガ3脂肪酸を含む青魚や亜麻仁油、クルクミンを含むカレーなどです。このブレインフードが脊髄に良い効果があることが動物実験で示されています。
- 5) 枕に気をつける
- 一般的に高い枕は良くありません。背骨はS字状のカーブを描いており、頚椎と腰椎は体の前方に向かって弯曲しており、
胸椎は後方に向かって弯曲しています。高い枕は、頚椎の自然な弯曲を損ないます。
そこで、頚椎と腰椎の弯曲に沿って、タオルを巻いてロール状にしたものを当てるようにすると首の痛みや腰の痛みに対して良い効果がありますが、 逆効果の場合もありますので、一度、レントゲンやCTでご自身の背骨のカーブを調べてから行ったほうが良いです。
以上の生活努力を行っても症状が持続する場合、あるいは症状によりある程度の苦痛がもたらされている場合には、薬物療法などを考慮します。
- 1) 薬物治療
湿布 動きや外傷に伴って発生した痛みの場合、あるいは痛みが軽い場合には湿布で改善する場合があります。 ロキソプロフェンなどの
非ステロイド抗炎症薬痛みに対して一般的に使用する薬ですが、胃の炎症を起こすことがありますので胃薬と一緒に服用します。 リリカ 神経障害性疼痛に対して使用されます。神経の痛みに対しては有効なことが多いですが、この薬が有効なヒトと無効なヒトが比較的はっきりしており、気分が悪くなったり、ふらついたり、眠たくなったりする副作用が出る場合があります。 ノイロトロピン 腰痛に対して有効ですが、副作用が少ないかわりに効き目がマイルドです。 トラマールやトラムセットなどの
オピオイド上記の薬が無効な場合に用いられます。吐き気を催す場合があり、吐き気止めと一緒に服用します。便秘になることもあります。 オパルモンなどの
血管拡張血流改善薬末梢血管を拡張させ血流を改善する作用のある薬で、腰部脊柱管狭窄症に対して用いられます。しびれや間欠性跛行を改善させる効果がありますが、効果は比較的マイルドで、ゆっくりと効きます。 芍薬甘草湯 こむらがえりに効果があります。
- 2) 神経ブロック
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- ① 上殿皮神経ブロック
- ある特殊な神経痛に対しては、殿部への注射による神経ブロックが有効です。
- ② 神経根ブロック
- ある神経が圧迫されて痛みが発生していると考えられるが、本当に原因となっているかどうか確かでないという場合には、神経根ブロックを行い確認します。これは透視下で行う必要があり、効果の確認のために1泊入院となります。
- 3) 物理療法
- 温熱療法、光線療法、牽引療法などがあります。ある一定の効果が認められていますが、根本的な治療ではありません。当センターでは行っていません。